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近藤和彦先生・後藤はる美先生・伊東剛史先生にECCOについてお話を伺いました

 



 
 

 

 

ECCOやNCCOを使わない研究は国際標準にならないという段階に来ています


実施日:2015年4月11日 
ゲスト:近藤和彦先生・後藤はる美先生・伊東剛史先生 
機 関:立正大学・東洋大学・東京外国語大学 
トピック: 
Gale Primary Sources



今日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。前回、2007年に Eighteenth Century Collections Online (ECCO) をテーマにインタビューさせていただいたときから、早いもので8年経過しました。そのときは、近藤先生とゼミの学生さんによる座談会 という形をとっていたわけですが、その後、後藤さんも伊東さんも大学に奉職され、研究者としての道を歩んでいらっしゃいます。また、近藤先生も東京大学から立正大学に移られました。この間、学術資料の電子リソースの利用環境も大きく変わりました。座談会と同じ頃、近藤先生に単独インタビューさせていただいたとき、「Nineteenth Century Collections Online を早く作ってください。」と、先生から言われましたが、その Nineteenth Century Collections Online (NCCO) もリリースされました。また、ECCOと The Making of the Modern World (MOMW) が大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)のコンソーシアム商品に採択され、とてもお求めやすい価格で提供させていただけるようになりました。おそらく先生方にとっても、電子リソースの利用状況は大きく変わっているのではないかと思いますが、前回の座談会の時と比べ、どういう点で大きく変わったのか、また変わっていないことは何か、先生方の個人的な経験を踏まえて、簡単に振り返っていただけますか。

 

State Papersのデータベース化は、イギリス近代史研究に革命的変化をもたらすかも知れません

 

近藤先生 数年前に比べて良くなっていると思いますが、よく分からない部分もあります。使えるデータベースが格段に増えたのは事実です。8年前にはまだ企画段階でリリースされていなかったマニュスクリプトのデータベース、Galeのものでは State Papers Online が使えるようになった、それもチューダー朝、スチュアート朝だけでなく、18世紀のハノーヴァー朝まで使えるようになったことは、イギリス近代史研究者にとってたいへん素晴らしいことで、研究に革命的変化をもたらすかも知れません。その反面、以前は東京大学にいましたが、今は電子リソース環境が随分違う、と実感しています(笑)。IT環境の大学間格差がとても大きいわけです。大学の規模というよりも、研究型大学かどうかということが大きく、研究型大学からそうでない大学へ移るとその違いが身に沁みます。ですから、世の中の変化に反して、この間に革命的に良くなったという感覚が実は私にありません(苦笑)。

 

最近、大学の有り様が変わっているように見受けられます。研究型大学なのか、そうでないのか、と。予算配分でも格差が出てきます。弊社はできるだけ多くの研究者にデータベースを使っていただきたいと思っていますが、思い通りに導入が進んでいないのが現状です。近藤先生が最後でおっしゃったことは全国の多くの先生方が感じていらっしゃることではないかと思います。人文科学向けの予算をどのようにして獲得していくのか、ということが大きな課題だと認識しています。

 

日本にいながらにして最先端のグローバルに通用する研究ができるようになります

 

近藤先生 そうですね。それと関連しますが、理工学や生命科学では最新鋭の実験装置がなければ、研究できないわけです。人文科学では、20年くらい前までは、それなりの図書館が利用できれば、何とか研究はできました。勿論、たとえば西洋史で最先端の研究をしようと思えば、欧米の図書館や文書館へ行くしかなかったわけですが。ところが、この種のデータベースが出てくると、日本にいながらにして最先端のグローバルに通用する研究ができるようになります。その一方で、これに取り残される大学も非常に多い。私たちの先生方の時代には考えられなかったことですが、外国の研究者たちと同じ水準で最先端の研究ができるかも知れないということを、現在の大学の先生方がどこまで認識しているのか、ということです。むしろ、それを認識しているのはまだマイノリティーかも知れません。学内世論を高めようとしても、なかなか賛同の声を集めにくいというのが現状ではないかと思います。

 

大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)でECCOやMOMWが採択されたわけですが、突然決まったように見えるかもしれませんが、勿論選んでいる人がいるわけです。大学の先生方や図書館員で構成された委員会で選ばれた結果、採択されたのです。では、何を基準にしてこれらの方々が選んでいるかというと、いろいろな基準はあるのでしょうが、その中には大学の先生方の声があったはずです。ですから、大学の先生方の声を集約してJUSTICEに吸い上げるチャンネル作りが必要ではないかと思います。実際、ECCOやMOMWが採択されるまで長い時間がかかっていて、その間、多くの先生方の後押しをいただきました。

 

後藤先生 とにかく、データベースの数が増えたという実感があります。前回の座談会の時には西洋近世史の分野では多分、ECCOとEarly English Books Online (EEBO) とあと一つ何かあれば、ほぼ網羅している、という感覚があったと思います。今回、トライアルで使ったデータベースだけでも、非常に多くのデータベースがありました。だからこそ、横断検索のプラットフォームが必要になるのかもしれません。近藤先生からお話があった通り、全部を揃えられる大学は限られているわけで、私自身、なくて困っているのですが、やはりコンソーシアムのような形で導入が進み、その枠組みに組み込まれるのを期待するしかないのかな、と思っています。

 

伊東先生 やはり、増えたというのが第一印象です。前回の座談会の時、新聞データベースや Nineteenth Century UK Periodicals のような雑誌データベースはありましたか?

 

 Times Digital Archive はすでに出ていました。

 

 

データベースが増えた一方で、作業自体はあまり変わっていません

 

伊東先生 Illustrated London News や Punch のデータベースもなかったですよね。データベースが増えたことに加え、ネット環境も改善されました。研究室では27インチのディスプレイを2つ並べて使っているのですが、検索して見つけた記事を並べて視覚的に比較するのが容易になりました。その反面、PDFでダウンロードするという方法は変わっていません。扱わなければならない情報量が増えている一方で、作業はあまり変わっていなくて、もっと早くできれば、ともどかしく感じることがあります。

 

前回の座談会の記録をもう一度読み返してみました。データベース導入の初期段階だったと思いますが、その時点で既に重要な論点が幾つか出ているというのが印象的でした。その中で一つ、データベースでフルテキスト検索を行なうことで、マイナー作家やマイナー作品に光を当てるメリットが挙げられていました。前回の座談会から数年経過しましたが、ご自身の研究で経験されたことでも、学界全体のことでもよいですが、これに関する何かエピソードがありますか。

 

データベースの利用により、キーワードを基軸にした研究が膨らみます

 

近藤先生 マイナー作家というよりも、匿名作品へのアクセスが容易になりました。シェイクスピアならシェイクスピア、ジョンソンならジョンソンの作品をベースに何かを分析するというのが一昔前までの研究法だったとすると、データベースを利用できるようになると、”moral economy” や ”people” のようなキーワードの使用例を調べることができ、キーワードを基軸にして研究が膨らみます。従来も Oxford English Dictionary (OED) という便利なツールがあったため、その種の研究が全然できないわけではありませんでした。OEDの場合は一つの世紀に少なくとも一つの用例を出すという原則を掲げています。でも、同じ世紀の中にも用例がたくさんあるわけで、それを探り当てることができるのは、データベースの決定的強みです。

 

 データベース以前には取り上げられることのなかったようなテーマが取り上げられるようになってきたという傾向は見られますか。

 

データベースを使ってみて、19世紀におけるコブラのイメージの広がりを確認することができました

 

伊東先生 自分の研究テーマを例に挙げると、イギリスの植民地インドのコブラの話です。コブラというのは、ヘビ毒という医学上の問題と関連しながら、人々の想像力を掻き立てる存在でした。そこで、わたしは当時のイギリスの定期刊行物や文学作品の中でコブラのイメージを追っています。19世紀末にキプリングという作家が『ジャングル・ブック』という小説を書いていて、その中にマングースとコブラが闘う場面が出てきます。データベースで調べてみると、マングースとコブラが闘う場面が、いろいろな児童向けの物語の中に何度も出てきていて、そのイメージが大きな広がりをもっていたということが確認できました。

 

主にどの種の資料をご覧になりましたか、新聞ですか?

 

伊東先生 Nineteenth Century UK Periodicals だったと思います。それから、Nineteenth Century Collections Online (NCCO) の中に児童書のコレクションがありましたが、その中にもその種の物語が多数出てきました。

 

かつての学界の大御所の研究が再検討される道が拓かれる

 

前回の座談会の最後で近藤先生がとても印象的なことを語っておられます。データベースがなかったときに学界の大御所が天才的なセンスで行なった研究が、データベースを使うことで資料に基づいて検証される道が拓かれる可能性がある、と。学問がまるっきり変わるかも知れないという期待が述べられたわけですが、実際のところ、データベースの登場によって学問が変わりつつあるとの実感を持っていらっしゃいますか。

 

近藤先生 変わりつつあるのではないかと思います。その発言をした時に念頭にあったのは ”moral economy” という概念です。イギリス歴史学界にE.P. トムスン(Edward Palmer Thompson)という大御所がいて、”moral economy” というキーワードで18世紀の民衆文化を論じたわけですが、その議論にはどうも無理があるのではないか、ということがデータベースで検証してみて感じたことです。トムスンのモラル・エコノミー論は、20世紀の最後の20年間に歴史学界だけでなく、他の分野にもの凄い影響を与えましたが、実はトムスンの思い込み、願望が大論文になったに過ぎないのではないのか。2013年にハーバード大学で開催されたトムスンを記念する学会でペーパーを発表しましたが、相当な反発を受けました。何のためにそんなペーパーを読むのだ、と(笑)。トムスンの偉大さを木端微塵にしてしまうのですから。

 

その辺りのことは『史林』にも書かれていますね。

 

近藤先生 京都大学でもそのことを話したのですが、それが『史林』に掲載されたものです。

 

『史林』で先生は、大変面白いことをおっしゃっています。「キーワード検索により長期的な言語のコーパスを分析し、モラル・エコノミーの歴史的な変遷、多様な方法を確認することができる。」資料を「言語コーパス」と見なす発想自体、データベースの登場によって初めて出てきたのではないかと思います。

 

複数の用語の出現頻度を比較できるようになったのは革命的と言って良いでしょう

 

近藤先生 歴史学の中にも言語論的転回という考え方があり、歴史資料も言説(ディスコース)に過ぎないというような哲学的な議論がありましたが、むしろ、そのような抽象的な議論をするよりは、特定の用語、言説が時代を通じて使われ方や頻度がどのように変遷したのか、具体的に分析した方が有益ではないかと思います。今回トライアルで使った Gale Primary Sources に Term Frequency というツールが付いていますが、これを使って調べてみました。”moral economy” というフレーズの初出は1724年で、現在に至るまでグラフを描いています。意味的にはこれと異なるが近い ”moral philosophy” というフレーズのグラフは、”moral economy” よりも上に来て、使用頻度が多いことが分かります。”moral philosophy” というフレーズと比較することで、”moral economy” というフレーズが比較的マイナーで珍しい用法だったということが分かります。さらに、E. P. トムスンが ”moral economy” と対比した ”political economy” はグラフでは ”moral philosophy” より上に来ます。”moral economy” と比較すると、出現頻度が大きく異なります。このようにあるタイムスパンで複数の用語の出現頻度を比較することは、かつてであれば一生かけてもほとんど不可能だったのが、データベースを使って一瞬で出来るようになったということは、革命的と言って良いでしょう。ただし、注意しなければいけないのは、1800年や1900年の前後でグラフが突然変化しているのは、ECCOやNCCOがそれぞれ18世紀、19世紀の資料を収録しているからで、世紀を跨いで比較しようとすると危険です。むしろ、ある世紀に限り用語の頻度を見る場合に限り、有効と考えた方がよさそうです。

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新しい研究テーマの可能性についてブレインストーミングできるようになったのは画期的 

 

後藤先生 近藤先生のお話にあった通り、量的な分析が可能になったということが大きいです。ある語が出てこないということを確認するためにデータベースを使うこともできます。今、感情の歴史ということをやっていて、痛みという言葉に注目しています。17世紀に ”pain” という言葉は、あまり文献に出てこないのです。ただ、それが本当に出てこないのか、今までは自分が読んできたものに出てこなかったに過ぎないかも知れないのが、データベースの登場により、読んだことのない文献をも検索できるようになり、どの頻度で出現するのか、量的に確認できるというメリットが得られます。それから、 ”cosmopolitanism” という言葉がありますが、17世紀には ”cosmopolitanism” という言葉はありませんでした。いつから使われ始めるのか、関連語がどのように出てくるのか、といったことを調べるのは、データベースでなければ不可能です。「ない」ことの意味を従来よりも安全に、立体的に考えられるようになりました。さらに、新しい研究分野に着手する時に、ブレインストーミング的にデータベースを使うことがあるのですが、このテーマは行けそうか、行けそうでないかという第一印象が得られるようになったのは大きなことです。

 

前回の座談会でも、その論点は出ていましたね。

 

データベースの収録資料の範囲、仕組みについて自覚的でありたいと思っています

 

伊東先生 史料を読むときに史料批判をするのと同じで、データベースに対してもデータベース批判が必要だと思います。19世紀の史料の電子化は拡大しましたが、何が入っていて、何が入っていないということに、もっと自覚的にならなければならないと思っています。データベースをブレインストーミングのために使うときも、なぜこの検索結果が一番上に来て、この検索結果が一番下に来るのかという仕組みが利用者にはブラックボックスです。データベースがない時代であれば、主体的に資料のあるところへ行って調べていたので、自分がどのような仕組みでリサーチをしているというのが分かっていたと思いますが、データベースを使うことによって、実は分かっていない部分があるというか、データベースに誘導されているというか、どういう仕組みでこういう検索結果が出ているのかというところに疑問を感じることがあります。

 

後藤先生 そういうことにも目が向くようになってきたのは、やはりデータベースが増えたからですね。

 

データベースのクオリティを研究者とともに高める必要があると思います。検索結果に関することで疑問を感じられた場合は、フィードバックしてください。これまで小社のデータベースについて、先生方にインタビューさせていただきましたが、データベースを利用することで可能になることについて質問すると、皆さん同じようなことをお答えになります。データベースを利用することで、同じ時代に様々な現象が起こっているという、その同時代性に関心が向くようです。無関係に見えそうな二つの出来事が同じ新聞の号に掲載されていたり、有名な作品が出版されたのと同じ時代に様々な無名な作品が出版されていたり、同じ時代に特定の言葉が頻繁に使われているという事実を学問的に意味づけてみたいという気持ちになるようです。これについてはどのようにお考えですか。

 

近藤先生 ある出来事が、最初に新聞記事として掲載され、その後他の媒体にも掲載され、反響が広がってゆくプロセスを追ってゆくのは、確かに面白いことです。メジャーな人のメジャーな作品が何年に刊行されたということだけでなく、その作品がどのように波及していったのか、批判されたのか、あるいは、ダーウィンの場合が有名ですが、同時代的に同じ考えを提唱している人が何人もいたにも関わらず、その中でダーウィンだけにスポットが当てられ、歴史の中での評価が定着するようになるプロセスを見てゆくのは興味深いことです。

 

データベースを使うことで時代の世界観が垣間見えてくる経験があります

 

後藤先生 同時代性というよりは、ある出来事がその時代のどのような世界観の中で起こっていたのかということが、データベースを使うことによって見えてくると感じています。検索して特定の言葉がヒットするとか、同じ人物の文献がヒットするというところから、その時代の世界観が垣間見えてくる経験があります。今、魔女について調べているのですが、魔女裁判が起こるので ”Witchcraft” は法律文献にも出てきますし、新聞記事にもなりますし、呪いによる病と見なされていたため医学の文献にも出てきます。もちろん、神学論争の問題でもあります。一つのテーマが同時代の様々な領域で広がりを持っている様がデータベースを通じて確認できるのは面白い経験です。

 

伊東先生 無関係に見えそうなことということよりは、関係のありそうなことを探してゆくという例ですが、コブラの話です。19世紀のロンドン動物園でコブラに噛まれた飼育係が死んでしまったという事件がありました。センセーショナルな事件なので、いろいろなメディアで報道されました。一つの系統は Lancet に代表される医学雑誌です。そこでは、コブラの毒は何だったのか、コブラの毒に対して施された処置は医学的に正しいものだったのか、という医学的な論争がある一方で、事件を脚色し想像力を掻立てるゴシップ的な記事がもう一つの系統にあったということが見えてきました。データベースを使わなければ分からなかったことです。無関係に見えそうなことに関してでは、動物実験を規制する法律の制定を巡る論争のことを調べているのですが、1870年代に生体解剖論争と呼ばれる一連の論争が起きます。議会のハイポリティクスでの議論を調べつつ、定期刊行物や児童文学にも分け入って、当時の社会での動物観を探ってゆくと、後藤先生が言われたどういう世界観の中である事象が動いていたのかということとも関係しますが、特定の言説が異なるレベルのリソースの中にあって並行して作用する様子とか、そうした言説間のダイナミックな相互関係が見えてくるのではないか、と Gale Primary Sources を使いながら考えました。

 

ドイツ語やフランス語文献まで広げて横断検索できるようにすれば、凄いことになります

 

近藤先生 GPSでキーワード検索するときに、語尾など言葉の綴りを少し変えてみると、ドイツ語やフランス語やイタリア語の文献が案外、沢山ヒットしました。ECCOやMOMWは基本的には英語文献が中心ですが、英語以外の文献もヒットするということは、同じような問題が英語圏だけで議論されていたのではなく、ヨーロッパやアメリカを含む大西洋圏で議論されていたということで、こういうことが分かるのが歴史研究の醍醐味です。ですから、出版社が意識的に、ドイツ語やフランス語文献を中心にしたデータベースを作って横断検索できるようにすれば、凄いことになりますね。

 

ECCOのドイツ語版、フランス語版ということですね。

 

後藤先生 そういう点では、MOMWがそれに近いデータベースですね。

 

今回、先生方には弊社の歴史データベースを統合検索できるプラットフォームGale Primary Sources を事前に使っていただきました。ここにはECCO, The Times Digital Archive, The Making of the Modern Worldのほか、18, 19世紀のイギリスとアメリカに関するものに限定しただけでも、以下のデータベースが搭載されています。この中で、どのデータベースに興味をお持ちになりますか。

 

近藤先生 特定のデータベースに限定するのではなく、すべてのデータベースを対象にして使ってみました。どのデータベースの記事だったのかということは、検索結果を見て事後的に分かったに過ぎません。

 

歴史分野のデータベースとしては、State Papers Online はまだGPSに入っていません。

 

17世紀の研究者にとって State Papers Online は本当に画期的なデータベースです

 

後藤先生 State Papers Online は本当に画期的なデータベースで、今後これが使えるかどうかは17世紀を研究する者にとって本当に重要です。それ以外では、MOMW、The Making of Modern LawSeventeenth and Eighteenth Century Burney Collection Newspapers。それから、アメリカのことも少し調べていますので、今回初めて Sabin Americana を知って、面白いと思いました。このデータベースに気づいたのはGPSを使っていたら、Sabin Americana の記事がヒットしたからです。アメリカの資料を収録しているデータベースを含め、一括して横断検索できるようになると、イギリスとアメリカの繋がりを調べてみようという人が増えてくるのではないかという気がします。

 

先生は17世紀ですから、EEBOを良くお使いになっていると思いますが、EEBOとECCOは現在、横断検索できるようになっています。

 

後藤先生 よく使っています。さらに学生のことを考えると、19世紀の資料の方が使いやすいですし、図版が沢山入っていて、この種の資料がデータベースで手軽に使えるようになると、卒論でもやれることが変わってくると思います。

 

今、The Making of Modern Law を挙げられていましたが、法律資料もお使いになるのですね。

 

後藤先生 もともと法社会史をやっていましたので、法律資料にも関心があります。

 

The Making of Modern Law のシリーズには7つのデータベースがありますが、その中で関心をお持ちなのは Trials ですか。

 

後藤先生 17世紀の資料が入っているのは、それほど多くはなかったと思いますが、Trials がよくヒットしました。17世紀の段階では、まだ本当の法廷資料ではなく、Trial Pamphlet が多かったです。

 

法案の追跡はHCPPを使い、法律制定後の事情はMOMLを使って調べています

 

伊東先生 今関心があるのが、先ほど申し上げた動物の生体解剖論争に関わる法制化の問題とヴィクトリア時代の科学と国家の関係です。この時代のイギリスでは国家が科学振興にあまり関与してこなかったというイメージが、同時代のドイツとの比較の中で、強く押し出されてきたと思いますが、このイメージが歴史的に正しいものなのかどうか、法律関係の資料に当たりながら実証的に確認している段階です。議会議事録のデータベースである House of Commons Parliamentary Papers (HCPP) を使うと法案は追跡できますが、法律制定後の事情は、MOMLを使って調べています。科学振興に関する法律として当時どのようなものが存在し、どのような審議過程を経て制定されたのかということを調べてみたいと思っています。

 

NCCOの中にも科学技術をテーマにしたアーカイブが二つあります。Science, Technology, and MedicineScience, Technology, and Medicine Part II です。

 

伊東先生 ありましたね。

 

今回、先生方に、Gale Primary Sources をトライアルでお使いいただきましたが、今後、たとえば年に1回、関心をお持ちの先生方に同じようにトライアルでお使いいただくというのは有効だとお考えですか。

 

近藤先生 もの凄く喜ぶと思います。

 

後藤先生 みんな徹夜しますよ(笑)。

 

全員(爆笑)

 

前回の座談会のときにも、徹夜してダウンロードしたという話が出てきましたね。やはり、出版社としては売ることだけでなく、商品の認知度を高めるということも重視しています。

 

Gale Primary Sources がこれだけ魅力的なデータベースだということを、まず知ってもらわねば

 

近藤先生 そう、これだけ魅力的なデータベースだということを、まず知ってもらわねば。

 

それから今利用している先生方だけでなく、将来、後進の先生方、大学院生が利用することも考える必要があると思っています。

 

伊東先生 最初の「ツカミ」が大切だと思います。特に学生のことを考えると、直観的なインターフェースで結果が出てきやすいものの方が、普及しやすいと思いますし、今回のトライアルではiPadでも使ってみたのですが、Flash がないと閲覧できないデータベースもありました。

 

今、コンピュータを触らない子どもが増えているという統計が出ています。インターネットのアクセスは専ら携帯端末で行なっているようです。携帯端末しか使わないという状況にあるということは、出版社としても、危機感をもって認識しています。タブレットの次の時代は、眼鏡が端末になるとも言われています。出版社としても、対応が迫られています。

 

ECCOやEEBOは英文科の先生方にも面白いと思っていただけるデータベースです

 

後藤先生 他分野の人を巻き込むことができるかどうか、が重要ではないかと思います。ECCOEEBOは英文科の先生方にも面白いと思っていただけるデータベースなので、他分野の先生方にトライアルをしていただくのは効果的だと思います。それから、学生も使えるデータベースと納得してもらえるか、ということも同じように大切です。

 

学生の利用促進を考えたとき、どのようなコンテンツが求められているのでしょうか。

 

ページ数での絞込みができれば、教育目的に有効

 

後藤先生 学生には資料との出会いを体験してもらうことを重視しています。自由にテーマを選択して、面白いと思った資料を探して、どこが面白いと思ったのか言ってもらう、ということをやっています。データベースは、異なるデータベースでも、凡そ機能は似ているので、一つのデータベースを使えるようになれば、他のデータベースも使えるようになります。ですから、学術データベースに慣れてもらうという意味もあります。さらに、コンテンツは英語なので、英語を使って情報を探すというトレーニングにもなるので、演習としては効果的と思っています。反面、いきなり専門性の高い情報がヒットしてしまうというデメリットもあります。紙の刊行物であれば、本文に解説や脚注が付いたものを学生に提示できますが、その種の解説や脚注のない原資料だけがストレートに出てきてしまう、そのギャップをどう埋めるか、という課題があります。学生自身にそのギャップを埋めさせるには、原資料に関する専門書や参考図書を揃えなければならない。そのパッケージをどうやって提供してゆくのか、という課題もあります。ただ、学生に使わせることを考えると、図版が多いデータベースは使い勝手がよいと思います。17世紀にはブロードサイド(Broadside/Broadsheet)、瓦版があるのですが、瓦版を検索できる機能が付いているデータベースはどうも非常に少ない。ECCOでは資料の物理的形態に関する physical description のところは検索で拾っていないようです。実際、検索項目としてあった方が便利だと思います。GPSの詳細検索画面でも、”musical works” や ”poem” などドキュメント種類(Document Type)を絞り込む機能はありますが、ブロードサイド/ブロードシートはありませんでした。それから、”pamphlet” は入っていますが、100ページ以下のもの、50ページ以下のものというように、ページ数での絞り込みはできません。性質をある程度絞ることができるので、これができると教育目的には有効だと思います。

 

以前、ある先生から、外交官の日記なのか、商人の日記なのか、分けて欲しいという要望をいただいたことがありました。

 

後藤先生 著者の特定は、EEBOのもととなったShort Title Catalogue のように、きちんとした書誌学の業績とODNB(Oxford Dictionary of National Biography)など詳しい人物事典との照合がなければ難しいと思いますが・・・。ただ、瓦版なら1ページという物理的な形態に関する定義があるので、機能に加えるのは難しくないと思います。商人なのか、外交官なのか、という質的な判断とは少し異なる問題です。

 

瓦版なら瓦版だけを拾って欲しいということですね。

 

後藤先生 そうです。検索オプションに加えられれば、大分違ってくると思います。”one sheet” / ”1 page” という記述は書誌の中に入っているはずですが、検索で拾うことはできませんでした。

 

誰もが読めるように制作されているプロパガンダ資料は分かりやすく、学生の反応もよい

 

伊東先生 私も同じようなことを感じていて、GPSは Document Type がこれだけ詳細に分類されていることを見ても、研究者向けデータベースです。もう少し、選別された小規模なパッケージの資料が収録されたデータベースがあれば、と時々思います。19世紀のプロパガンダの図版を授業で使うことがありますが、プロパガンダ資料は誰でも読めるように制作されているので、資料として分かりやすく、学生の反応も良い。英国図書館(British Library)に所蔵されている資料を使っています。解説が付され、授業で使えるような配慮が行き届いている便利な資料です。こういう資料がデータベースになっていて、学生がキーワードを入れるだけでヒットして、それに加えて、解説や注釈も出てくるというデータベースがあれば、教育的効果はあると思います。

 

とても面白いですね。

 

伊東先生 イギリスの大学では、teaching materials がウェブサイトに出ていて、図版やワークシートもあって、便利なので、時々覗いています。これは、特定のテーマの資料を紹介しているだけですが、こういう資料がデータベース化されると面白いと思います。

 

確かにこれだけ資料が含まれていると道に迷ってしまいます。

 

後藤先生 ある程度は宝探しに行かせたい(笑)、と思っています。

 

伊東先生 そうそう。でも、実は、学生には見えないようなレールが敷いてあったりする。(笑)学部教育の段階では、やむを得ないとも思います。

 

これらのデータベースに収録されている資料を見ると、ECCOのように書籍中心のもの、Burney Collection のように定期刊行物(新聞、雑誌)をデータベースにしたもの、State Papers Online のように手稿文書中心のもの、NCCOのような書籍から定期刊行物、手稿文書、写真、地図まで、様々なタイプの資料を収録したものなど、さまざまです。今日お集まりの先生方は、後藤先生が17世紀、近藤先生が18世紀、伊東先生が19世紀と、異なる世紀を研究対象とされています。それぞれの時代の資料の電子化の現状-このタイプの資料は電子化が進んでいるが、このタイプの資料はまだ電子化がされていない、というような-についてはどのようにご覧になっていますか。電子化を希望される資料があれば教えてください。まず、17世紀について、後藤先生お願いします。

 

17世紀の非英語圏のパンフレットなど、マニュスクリプトの電子化の拡充を期待します

 

後藤先生 今回トライアルをしてみた限りでは、19世紀の資料の電子化が急激に進んでいます。17世紀はもともと活字資料が少ないということもあるので、マニュスクリプトの電子化が拡充することを願っています。State Papers のようにもともと、カレンダー(要項)がきちんとしていて、マイクロフィルムのコレクションがあるものが先行してデータベース化されると思いますが、それだけでも素晴らしいことです。それに加え、近藤先生が先ほどおっしゃっていた非英語圏の資料の電子化の拡充を期待します。17世紀にはヨーロッパ諸国の間でパンフレット合戦があったという研究が出てきているので、非英語圏のパンフレットがデータベースで読めるようになると面白いと思います。さらに、個人的には日記や書簡のデータベースが欲しいです。今、本のデジタル化が進み、他方では日記や書簡の刊行が進んでいますが、その種の私文書で個人名や個人の生活実態が分かる資料がデータベース化されると、研究が大きく変わってくると予想しています。17世紀ではピープス(Samuel Pepys)の日記とか、ロジャー・モリス・プロジェクト(Roger Morris Project)のような大型プロジェクトが幾つかありますし、マイナーな人物の日記も沢山出始めているので、これらが横断検索可能になれば、研究が様変わりするだろうと思います。

 

おそらく、所蔵機関がどこかということがポイントになってくると思います。Galeのデータベースは、イギリスのものであれば、英国図書館や英国公文書館に所蔵されている資料が多く搭載されています。

 

後藤先生 すでに刊行されている資料について、別の出版社から出ているのを少しずつ集めるのは難しいということですね。

 

実現不可ではありませんが、優先順位の問題です。今おっしゃったことが求められているというマーケティング情報がまだ少ないと思います。17世紀の非英語圏で言うと、特にどの言語でしょうか。

 

近藤先生 やはり、フランス語でしょう。

 

後藤先生 フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語あたりでしょうか。

 

近藤先生 世界史におけるフランスのプレゼンスが17世紀から高まるということもありますし、フランスの政府や学者がそのことに熱心ですから、フランス史の研究者はデータベースをよく使って研究しています。フランスは、英語圏と異なり、中央政府と地方自治体の肝入でやって、データベースは外国人もフリーにアクセスできるということが多いです。

 

18世紀はどうですか。

 

近藤先生 今の後藤先生の話と本質的には同じですが、State Papers Online が出てきたというのは良いことですが、どうして18世紀の State Papers の電子化が遅れたかというと、18世紀の要項(カレンダー)がなかったからです。マニュスクリプトの量は17世紀より18世紀の方が圧倒的に多い。だから、要項を作るのが間に合わなかった。でも、今回使って分かったのは、要項がないから、司書とボランティアの人達で List and Index Society を作って、ただのタイトルと年月日をリストにしたものが出てくるのです。それだけです。行数で言えば、1行か2行です。17世紀のカレンダーであれば、文書の差出人の名前と宛名だけでなく、詳細な情報が何行にも亘って記述されているのにね。でも、何もないよりはマシで、いろいろ検索できます。18世紀でこんな感じなら、19世紀の State Papers の電子化はもっと遅れるのではないでしょうか。

 

今年、State Papers Online の Eighteenth Century, Part II がリリースされます。

 

近藤先生 そうですか。State Papers のうち、1715年までのチュ-ダー朝とスチュアート朝のものは、本来の所蔵機関である英国国立公文書館のものだけでなく、英国図書館などが所蔵しているものも加えていますが、1715年以降の18世紀の State Papers になると、公文書館所蔵の資料だけです。ところが、18世紀のイギリス政治史を研究するには、公文書館の State Papers だけでは充分ではありません。当時は、所管大臣は公文書を自宅に持ち帰ることも普通で、返却しない場合もあります。持ち帰って仕事をして、そのまま当人が亡くなってしまうこともあった。それが、ハードウィック・ペーパーズなどという形で英国図書館が買い取ることになるわけです。ですから、公文書なのに英国図書館で所蔵されるというケースが出てくるわけです。モリル(John Morrill)先生たちがやった革命的なことは、公文書館以外に分散した公文書を電子的に合体させるということです。しかし、これをやるためには、学者が監修しながら、プロジェクトを進めなければいけないのです。ですから、17世紀までのデータベースと18世紀のデータベースを比較すると、クオリティが違うと思います。でも、電子化されていない状態と比較すると、研究者にとって遥かに望ましい状況にあるのは確かです。

 

後藤先生 マイクロフィルムを使っていた時とは雲泥の差ですね。

 

近藤先生 あれは、何だったのかいう感じです。(笑)

 

伊東先生、19世紀はいかがですか。

 

伊東先生19世紀は定期刊行物やマニュスクリプトまで、電子化が進んでいて、グラッドストーンの文書も電子化されていて、驚きました。写真や地図もそうですね。

 

動物に関係する文書ではどうですか。

 

消費文化に関する三次元的なものが次の電子化のステップとして考えられます

 

伊東先生 ボドリアン図書館の John Johnson Collection というのがあって、そこでリサーチをしたときに、動物園をモチーフにした玩具が出てきました。そういう消費文化、消費社会に関する三次元的なものが次の電子化のステップとして考えられるのではないか、と思います。

 

そういう構想はないわけではありません。Galeはスミソニアン博物館の資料の電子化を手掛けています。文字資料から図版資料、さらには三次元の資料の電子化という方向性を見据えているというのが、背景にはあります。

 

伊東先生 それからファッションですね。19世紀をやっていると、この時代の人はどういう服装をしていたのか、ということが気になります。この時代になると、流行が頻繁に変わったはずです。時代のイメージを掴むときに分かりやすいデータベースがあれば、面白いと思います

 

ポピュラーカルチャーに焦点を当てたデータベースですか。それとも、ファッションに関するものですか。

 

伊東先生 消費文化とか、その時代に流行したものが分かるデータベースです。

 

商品見本のデータベースがあれば素材面まで見分けがつくようになります

 

近藤先生 それは、モノの歴史ということです。実は、コットンの歴史をやりたいと思っているのですが、18世紀のフランス宮廷で貴婦人たちが一番着たかった素材は、絹ではなく綿(更紗)だったのです。同時代の日本が長崎経由で輸入していたもので最も高価だったのはインド更紗です。それが産業革命以後、日本では文化・文政期ですが、インドからの輸入品は質が劣化したため、日本は購入しなくなり、イギリスの工場で生産された100%綿の更紗を日本人の好みに合わせてプリントしたものが、長崎経由で輸入されるようになり、江戸幕府の大奥で婦人たちが着ていました。フランスのベルサイユ宮殿で貴婦人たちが着ていた服と江戸城の大奥で婦人たちが着ていたものを比較すると、反物の素材も製法もほぼ同じだった。ただ、絹なのか、綿なのかということは、油絵を見てもよく分からない。商品見本のデータベースなら拡大表示することで、素材面まで見分けがつくようになる。これが実現すると大変面白いですね。

 

後藤先生 現実的には、すぐ電子化が可能なのは博物館カタログですね。

 

そうですね、スミソニアン博物館所蔵資料のデータベースがまさにそれです。昔の時代のモノがどういう形をしていたのか知るには、博物館に行けばよいわけですが、いつでも博物館に行けるわけではなく、それなら博物館の資料を電子化しようということで、実現したのが Smithsonian Collections Online です。

 

 

近藤先生 でも、精度は高まったかもしれないけれど、ノイズはノイズなりに面白いわけで(笑)、何かを考えるきっかけにはなりますよ。

 

後藤先生 GPSをある意味でブラックボックスのように感じるのは、精度にも関係しますが、たとえばスペリングがどれくらい拾われているのか、どのフレームワークで検索しているのか、見えにくい部分があります。とても緻密な検索をするのは難しいだろうな、という感触でした。試行錯誤をして、確かにこの数は意味のある検索結果の数だというところに辿り着かなければならないので、そこがGPSでは難しいところですが、大まかな趨勢を見るには適しているような印象でした。全コレクションの特定期間を選択したうえで、特定語の Term Frequency をグラフ化し、グラフで趨勢を見て、そこから記事に直に飛べるところなど、面白いです。

 

 それから、マニュスクリプトについて言えば、勿論OCRで読み取ることはできませんが、書簡であれば発信者、受信者、発信地はテキスト入力し、検索に対応できるようになっています。実際、資料を見て確認しながら、入力しています。

 

伊東先生 Term Frequency で、タイムスケールをスライドして絞ることができるのは便利ですが、”vivisection”(生体解剖)というキーワードで検索したとき、早い時期の記事が見つかりました。こんな時期に生体解剖があったかな、と思って、よく見てみると、資料が入っているコレクションがその早い時期のものだっただけで、記事そのものはそんなに早い時期のものではなかったです。その辺りの精度がもう少しどうかならないかなと思いました。

 

後藤先生 他で面白かったのは、全体のボリュームの中の「ポピュラリティ」が見られることです。GPSに収録されている17世紀の資料は少ないのですが、頻度で見ると他の時代に比べ、単に少なかったり、存在しなかったりということになってしまいますが、特定の時期に限れば、全体のボリュームの中でどれだけ出てくるか、ということが分かり、面白いです。ただ、全体のボリュームが数十件ぐらいのレベルですから、もう少し増えてくれればという気がします。

 

GPSに17世紀の資料をもっと増やさないといけませんね。

 

近藤先生 Gale以外のデータベースで言えば、HCPPは1800年以降ですが、それ以前のコベットらの編集した議会議事録ですね。不完全かも知れないけれど、中世以来の記録が活字になっているわけで、これらがデータベースになると随分違ってきます。1800年より後についても、もちろん充実するわけですが、それ以前についても、ECCOとは異なる性格の資料群であるわけで、議会で何が議論されていたかということが分かる資料が加わるだけで、特定のキーワードの検索結果が変わってくると思います。

 

私自身が使っていて便利だと思うのは、資料に収録されている図版だけを別ウィンドウで一覧できる機能です。記事を一つ一つダウンロードする手間が省けます。

 

後藤先生 ”list of illustrations” ですね。

 

近藤先生 図版の場合、自分の研究のために使うのは良いとしても、本の表紙に図版を使う場合は、著作権的にはどうなるのですか。

 

研究教育用には自由に使うことはできますが、市販の書籍の表紙などで使用することまでは許可されていません。

 

後藤先生 その場合、どちらに確認すればよいのですか。原資料の所蔵機関ですか。

 

データベースの記事表示画面に著作権保有機関の記載のある場合は著作権保有機関へ確認いただき、著作権保有機関ではなく原本所蔵機関の記載のある場合は原本所蔵機関へ確認いただくことになります。ところで、データベースを使って論文を書く場合、データベース名を引用されますか。新聞記事であれば、データベース名まで引用しないで、記事名と発行日と新聞名だけ引用するのが一般的というお話を伺ったことがあります。

 

伊東先生 歴史の論文を見ていて、データベース名まで引用しているのは、見たことがありません。

 

近藤先生 最近は、ECCOを使っているケースなど、見かけます。

 

後藤先生 複数の版があって、Bibliographic Number でのみ特定が出来る場合はそれで代用することがあり、そこからデータベースを推定できることがあります。Oxford Dictionary of National Biography (ODNB) のような場合は、ODNBのどれを引用したのかを明らかにしますが、それを所有する史料館での文書番号がある場合は、その文書番号で済ますか、データベース名まで書くか、難しいところかもしれません。オンラインの書誌形式としては、URLを表記して、何年何月何日にアクセスしたか記すパターンもありますが・・・。

 

近藤先生 私は、たとえば英国図書館に所蔵されている文献であれば、BLのオリジナルの書誌情報を記載し、これはECCOにもMOMWにも掲載されていない(笑)、と書いたことはあります。

 

後藤先生 17世紀の印刷物についてはEEBOに載っていることがほとんどなので、誰かの論文で見たら、まずEEBOで探します。載っていないものもあるでしょうが、少ないと思います。

 

伊東先生 GPSを使ったとき、19世紀の定期刊行物で、日付がすぐ確認できない場合がありました。オリジナルでチェックしなければならないケースがありました。

 

後藤先生 データベース収録の雑誌を引用する場合、自分が見たデータベース名(たとえばJSTOR等)を引用することはないですよね。同時代資料についてデータベース名を特に引用しないのは、それと同じことかもしれません。

 

近藤先生 特定の言葉について、ECCOで検索すると何件ヒットし、GPSで検索すると何件ヒットするという数字を出して、その意味を論じるというケースでは、データベース名を明記するのが当然ですね。ただ、特定のパンフレットか何かを利用する場合には、今のところ、データベースを使っている場合でも、明記せず、元々の分類番号を書くのが普通のような気がします。

 

後藤先生 EEBOはESTCから来ているので、ESTCの番号を引用することが多い気がします。

 

近藤先生 センゲージラーニング株式会社としては、こういうやり方でよいのですか。やはり、データベース名の明記を求めているのですか。

 

特にデータベースの引用を求めているわけではなく、引用する場合は、こういうやり方で引用してください、というサイテーションの方法は明記しています。

 

伊東先生 確かに記事の下の方に出ていますね。ただ、あの方法で引用すると、引用部分のスペースが大きくなってしまい、不便です。

 

後藤先生 形式がもっと簡略化されると良いですね。

 

データベースを使った学際研究と言われて、すぐに思いつくのは科学史です

 

弊社のイギリスのウェブサイトには、ECCOのインタビュー記事が掲載されていますが、その中に Oxford English Dictionary (OED) の編集部がECCOを使っている話が出てきます。OEDは他の時代に比べると、相対的に18世紀が弱かったらしいのですが、ECCOを使うことで、多くの単語に関して初出例をさかのぼることができた、というのです。このように、歴史資料のデータベースは歴史研究者だけでなく、他の分野の研究者によって使われる可能性があります。ECCOのような歴史資料のデータベースが他の分野の研究者に利用され、ひいては学際研究に発展するというようなことは考えられますか。

 

近藤先生 大いにあり得ると思います。文学研究者であれば、これまでの作品研究を超えて、もう少し斬新な研究をする場合などです。すぐに思いつくのは科学史です。科学史ではECCOを使った学際研究ができると思います。

 

伊東先生 リーズ大学が拠点になっているサイパー・プロジェクト(SciPer Project)というのがあります。1999年から2007年まで続いていたプロジェクトで、19世紀イギリスの定期刊行物の中で科学に関連する記事を網羅的に調べ、記事の著者からDictionary of Scientific Biography (DSB) の記事にリンクを張るようなことをやっていたのですが、定期刊行物の記事自体は閲覧できないので、Nineteenth Century UK Periodicals などのデータベースで記事本文を閲覧していました。逆に、Nineteenth Century UK Periodicals の方では著者や記事の背景は分からないので、サイパー・プロジェクトの方で確認する、という関係になっています。出版物が拡大していった時期においてダーウィンの進化論がどのように受け止められたのかとか、最近注目されている事例で言えば、サイエンス・コミュニケーションを19世紀に舞台を移してみると、どのように見えるのかとか、科学の領域での学際研究の一つの事例と言えると思います。

 

後藤先生 今回のトライアルでいろいろ試したことの中で、楽譜が出てこないかどうか調べてみましたところ、こういうものが出てきました。

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ECCOに収録されていて、歌詞を見るとちょっと政治的なものともいえます。データベースに楽譜が収録されていると、音楽史の研究者も関心をもつと思います。どのくらい入っているかは分かりませんが、楽譜が入っていることが分かったのは良かったです。もう一つ、”witchcraft” で検索したら、なんと日本に関する記事が出てきました。

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1670年に刊行された文献で、MOMWに入っています。500ページ以上もあり、図版も多く、とても興味をそそる資料です。手軽に日本の記事も出てくるということで、日本史の研究者も興味を持つ人が増えるかもしれません。

 

楽譜は当時のミドルクラスの音楽生活を垣間見せてくれる歴史資料です

 

伊東先生 英国図書館に楽譜のコレクションがありますが、データベースに入れる予定はありますか。

 

NCCOの”British Theatre, Music, and Literature”というアーカイブがありますが、ここに英国図書館に所蔵されている楽譜は入っています。たとえば、元々ロイヤル・フィルハーモニック・ソサイエティに所蔵されていた楽譜です。その他、ハイドパークなどで開催された定例コンサートのプログラムなども収録されています。さらに作曲家の手紙も多数収録されています。そもそも、19世紀イギリスの音楽と言っても、著名な作曲家が少ないので、イメージしにくいですが・・・。

 

近藤先生 作曲家が少なくても、一大消費地ですから、イギリスの市場を意識して、ベートーヴェンもメンデルスゾーンもいろいろなプロモーション活動をやっていました。

 

伊東先生 私が関心を持っているのは、嗜みとしてピアノを弾いているミドルクラスの子どもがどんな譜面を見ていたのかということです。音楽史的には価値のない曲かも知れませんが、当時のミドルクラスの音楽生活を垣間見せてくれる歴史資料と言えるわけですから、英国図書館に所蔵されている楽譜を時々見て、面白いと思いました。動物関係で言えば、ロンドン動物園にカバが来て、人気が出た時に、「ヒポポタマス・ポルカ(hippopotamus polka)」という曲が作曲され、出版されたというようなことです(笑)。

 

今のお話は19世紀の楽譜ですが、それ以前の楽譜出版というのはどうだったのですか。

 

近藤先生 すでに18世紀初頭には楽譜出版は盛んでした。たとえば、ヴィヴァルディの曲の楽譜がアムステルダムで出版され、これをバッハが買い求めて、その楽譜を見ながら研究したという話が残っています。

 

データベースの構築自体が学際研究

 

後藤先生 データベースと学際研究に関することですが、イギリスとアイルランドの間で17世紀にアイルランド大虐殺という事件があって、その事件に関する証言資料のフルテキストデータベース化が最近完了し、現在無料で公開されています(1641 Depositions)。その事業についてアイルランドで報道されたニュースの中で、データベース構築自体が学際研究である、と言っていたことが印象的でした。データベース構築には歴史家、コンピュータ技師、言語学者らが関わっています。たとえば今、インターネット上には様々なスペリングが氾濫しているそうですが、その検索に関して生じているのと類似の問題が、スペルが一定しない17世紀の言語空間の検索でも課題となって、技術開発の参考になったとプロジェクトに関わったコンピュータ技師が言っていました。これは面白いと思いました。

 

近藤先生 テクニカルな問題もありますが、もう一つ大切なのは、アイルランドとイギリスの間の歴史認識の問題に関係してくるからです。

 

後藤先生 日本と中国の関係で言えば、南京大虐殺に相当する事件ですから。

 

近藤先生 日本と韓国や中国の間で南京大虐殺や慰安婦問題の問題について、各々が勝手なことを言っていてはどうしようもないわけです。今回のアイルランド大虐殺に関する史料データベースでは、アイルランドとイギリスの間で認識が異なる問題について、原史料をデータベース化し誰でもアクセスでき、しかも意見を書き込むことができるようにしました。専門のスタッフを置いて、変な書き込みにも即応できるようにしている。アイルランドとイギリスの歴史認識が共通で、学問的裏付けのあるものにしていこうという願いの込められたプロジェクトですから、素晴らしいです。

 

後藤先生 大学生や高校生が実際に資料を見て、それをもとにクラスで議論するようなこともできるわけです。

 

近藤先生 日本に関して言えば、近隣諸国との間の歴史に関する資料への電子的アクセスをどう構築するか、という話になります。イギリスとアイルランドの場合は英語だから、綴りが少し異なっても、あまり支障ないと思いますが、東アジア三国の場合は、言語も文字も異なり、台湾も入れれば、日本と中国本土と台湾で異なる漢字が使われているということを考えると、共通のデータベースの構築は容易ではないかも知れません。

 

電子リソースの方がセレンディピティの広がりは大きいような気がします

 

データベースと紙媒体の資料を比較して、データベースを使う場合にはセレンディピティの機会が乏しいというような言い方を時々耳にします。しかし、データベースを使う場合にもセレンディピティはあるのではないでしょうか。電子リソースの時代のセレンディピティとはどのようなことでしょうか。また、これまで電子リソースをお使いになって、セレンディピティ的な発見に出会った経験があれば、教えてください。

 

後藤先生 まさに、先ほどお見せした、”witchcraft”を検索したら、日本に関する文献が出てきたのは、セレンディピティです。検索語は”witchcraft”なので、日本とは全然関係ない。しかも、この文献を見つけられたのは、タイトルが ”Atlas japannensis” とAから始まっていたから、そしてたまたま検索結果をタイトル順でソートしてみたからです。勿論、紙の資料を読む時のセレンディピティも重要ですが、データベースは圧倒的な量をカバーしているということが大きい。データベースにはマイナス面もありますが、プラス面がマイナス面を補って余りあるというのが現状です。さらに、研究者であれば、”witchcraft” でヒットした文献について、検索語の前後だけを読んで済ますということはなく、そこでアナログの作業が入りますから、作業としてはデジタルとアナログが補完し合っています。

 

近藤先生 シェイクスピア学者はシェイクスピアの著作だけでなく、その時代の出版物や手稿を読んでいるのでしょうが、データベースでキーワード検索すれば、予想もしなかった資料に出会う。まさしくセレンディピティそのものだと思います。電子リソースの方がセレンディピティの広がりは大きいような気がします。

 

伊東先生 電子リソースを検索しながら複数の画像で並行しながら見ていると、資料と資料の出会いが起こっているような気がします。電子リソース登場以前であれば、関連づけようとしなかった資料が繋がって見えてくるというのも、一種のセレンディピティではないかと思います。

 

怖いのは検索してヒットしないと「ない」ことになってしまうことです

 

後藤先生 怖いのは検索してヒットしないと「ない」ことになってしまうことです。出てこないのは、本当は検索のやり方の問題かも知れませんし、データベースの収録資料のスコープの問題かも知れませんし、電子化しえないという資料の性質に起因する問題かも知れません。Gale Primary Sources という形で圧倒的な資料のボリュームを見せられると、ここになければ存在しないという錯覚に陥る危険があるのが、歴史研究者としては怖いところです。

 

近藤先生 マニュスクリプトがデータベースに搭載されるようになったということは、とても良いことですが、マニュスクリプトを検索する場合、State Papers Online のカレンダーのような索引に載っているものしかキーワード検索できないわけですから、マニュスクリプトの本文には書いてあるものの検索には引っかかって来ないものもあるということを利用者が自覚していれば問題ありません。自覚していないと、今言われたような「ヒットしないものは存在しない」ということになってしまいます。こんな凄いデータベースで探してもないのだからない、ということになってしまいます。

 

デジタルとアナログの間を行き来できることが、革命的なのかもしれません

 

後藤先生 ないのではなくて、見えないに過ぎない。やはり、デジタルの世界はデジタルの世界で完結していない、と思います。今、17世紀に書かれた女性の日記を読んでいますが、その中で「パーキンスを読んだ」とか、自分が読んだ本のことが書かれています。それで、パーキンスはその頃何を書いたのかをデータベースで探してみるということをやっていると、データベースだけで世界が完結するのでなく、デジタルとアナログの世界が補い合いながら研究が進んでゆきます。何が革命的であるかと言えば、むしろ二つの間を行ったり来たりできることなのかも知れません。

 

近藤先生 革命的であるし、インパクトが大きいのは事実ですが、反面、デジタルの世界だけで完結させると、自分のバイアスを反映させて見ているだけかも知れない。昔から研究者は、いろいろな媒体のいろいろなレファレンスを使いながらやっていたわけで、歴史事典のようなレファレンスの存在理由がなくなってしまうわけではないでしょう。

 

後藤先生 そこにデータベース構築のテクニカルな問題が入ってくるから、最初の方で伊東先生が指摘されたブラックボックスの問題になります。データベースとしてはきちんと構築されているかも知れませんが、その仕組を利用者が理解していないと、同じように検索しているようでも、利用者が異なれば同じ結果が出てこないということになります。リテラシーの差が如実に出てくる。たとえばGPSやECCOで ”pain” でvariationやfuzzyオプション付きでキーワード検索したとき、たくさん検索結果が出てきたのですが、あまりにも多くて変だと思い、よく見ると、”Spain” がヒットしているのです(笑)。その時、”NOT Spain” という検索条件を入れることができるかどうかで、大きいな違いが出てきます。ヒット件数が数千件もあれば、どこまでノイズなのか分からなくなり、そのあたりのリテラシーが要求されます。やはり、何度も試行錯誤することが大切だと思います。

 

近藤先生 使う人の力量とセンスに左右されるということで言えば、結局、自然科学と同じではないですか。すばらしい実験装置を使ってノーベル賞級の研究もできますが、使う人によっては、「何とか細胞が見つかりました!」(笑)ということになってしまいます。

 

全員(爆笑)

 

データベースを作る側もそういうことを理解する必要があると思います。作る過程の中で、利用者との対話が必要になってきます。今日は、研究者がどのようにデータベースを使っているのかが、具体例を通してよく見えてきました。ECCOやNCCOが学術研究に不可欠の資料であること、データベースが増えて広がりを見せてきたという反面で、様々な新しい問題が浮上してきているということも分かりました。多くの研究機関で導入され、一人でも多くの研究者に使っていただくためにも、エンドユーザーである研究者の方々のお話を伺い、それをデータベースの改善に反映させる仕組み作りが必要だと実感しました。

 

ECCOやNCCOやEEBOなしで研究しても、その研究は国際標準にはならないという段階にすでに到達しています

 

後藤先生 多くの機関に導入されるということに関して言えば、ECCONCCOEEBOのデータベースがない状態は研究者にとって致命的であると認識しています。問題は、この認識が研究者以外の人々にどこまで共有されるか、ということです。これらのデータベースなしで研究しても、その研究は国際標準にはならないという段階にすでに到達しています。その意味で現在の状況は本当に危機的です。

 

近藤先生 まさにその通りですね。研究者が異動しようというとき、元の大学ではECCOが使えたのに異動先の大学でECCOが使えなければ、そこには移りたくないでしょう。理系の研究者が実験装置のない大学へは行かない、というのと同じです。

 

今日は、長時間に亘り、ありがとうございました。

ゲストのプロフィール

近藤和彦 (こんどう・かずひこ)

 

最終学歴:

東京大学大学院人文科学研究科修了

略歴:

名古屋大学文学部助教授 東京大学大学院人文社会系研究科教授)、立正大学文学部教授などを経て

現在(2021年)、東京大学名誉教授

この間 マンチェスタ大学(Department of History) 客員研究員 ロンドン大学(University College London) 客員教授 オクスフォード大学 リナカ学寮(Linacre College) Senior Member ケインブリッジ大学 クレアホール学寮(Clare Hall) 客員フェロー を歴任

書籍:

  • 『イギリス史10講』(岩波新書, 2015年)
  • 『民のモラル - ホーガースと18世紀イギリス』(ちくま学芸文庫, 2014年)
  • 『文明の表象 英国』 (山川出版社, 1998年)
  • (編著)『ヨーロッパ史講義』(山川出版社, 2015年)
  • (編著)『イギリス史研究入門』(山川出版社, 2010年)
  • (編著)『長い18世紀のイギリス - その政治社会』(山川出版社, 2002年)
  • (編著)『西洋世界の歴史』(山川出版社, 1999年)
  • (共編著)『江戸とロンドン』(別冊都市史研究)(山川出版社, 2007年)
  • (共編著)『過ぎ去ろうとしない近代 - ヨーロッパ再考』(山川出版社, 1993年)
  • (共編著)『英国をみる - 歴史と社会』(リブロポート, 1991年)
  • (共編著)History in British History: Proceedings of the Seventh Anglo-Japanese Conference of Historians (Tokyo, 2015)
  • (監修)ジョン・ルカーチ『歴史学の将来』(みすず書房, 2013年)
  • (編集)ジョン・ブルーア『スキャンダルと公共圏』(山川出版社, 2006年)

ほか多数

 

 

 

新しいヨーロッパ史のテキスト(2015年5月刊)。今回インタビューを引き受けて下さった3人の先生が寄稿されています。

新しいヨーロッパ史のテキスト(2015年5月刊)。今回インタビューを引き受けて下さった3人の先生が寄稿されています。

 

後藤はる美(ごとう・はるみ)

 

最終学歴:

ケンブリッジ大学歴史学部 PhD 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程 単位取得退学

略歴:

ICU アジア文化研究所研究員 日本学術振興会特別研究員 を経て 現在(2021年)、東洋大学文学部史学科准教授

書籍:

  • 「第6章 「考えられぬこと」が起きたとき―ステュアート朝三王国とイギリス革命」、近藤和彦編『ヨーロッパ史講義』(山川出版社、2015年)
  • ‘Charges to the Grand Jury in Seventeenth-Century England’ in D. Bates & K Kondo (eds.), Migration and Identity in British History (Tokyo, 2006), pp.32-41.

論文:

  • 「迷信・軽信・篤信――17世紀イングランドにおける魔女と悪魔憑き」『白山史学』第51号、2015年、27~56頁
  • 「17世紀イングランド北部における法廷と地域秩序 国教忌避者訴追をめぐって」『史学雑誌』第121編10号、2012年、1~36頁

ほか多数

 

伊東剛史(いとう・たかし)

 

最終学歴:

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ PhD

日本学術振興会特別研究員 金沢学院大学文学部講師を経て 現在(2021年)、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授

書籍:

  • 「第8章 帝国・科学・アソシエーション-「動物学帝国」という空間-」、近藤和彦編『ヨーロッパ史講義』(山川出版社、2015年)
  • London Zoo and the Victorians, 1828-1859. Boydell and Brewer, 2014
  • 'Locating the Transformation of Sensibilities in nineteenth-century London' in Peter Atkins (ed.) Animal cities: beastly urban histories. Ashgate, 2004
  • 「第10章 『社会全体の利益のために』―ロンドン動物園と科学団体の公共性」、森村敏己・山根哲也編『集いのかたち―歴史における人間関係』(柏書房、2004年)
  • ‘The Zoo, Urban Regenesation and Popular Sensibilities about Animal Life in Nineteenth-Century London’ in Lars Nilsson (ed.), Urban Europe in Comparative Perspective, CD-ROM (Stockholm, 2007)
  • ‘Problems of the “Zoological Empire”: Migration and Identity of Mid-Nineteenth-Century British Bird Collectors’ in K. Kondo and D. Bates (eds), Migration and Identity in British History (Tokyo, 2006), pp.123-129

論文:

  • 「近代科学の「周縁」-19 世紀イギリスにおけるジェントルマン科学と気候順化-」『専修大学人文科学研究所月報』 第275号、2015年、17~37頁
  • 「満ち溢れる禽獣-動物観の変容と都市のトポグラフィー」『金沢学院大学紀要-文学・美術・社会学編』第11号、2013年3月、236~246頁
  • 「『マーティン法』の余波―19世紀イギリスにおける動物福祉の法制化と世論形成」『金沢学院大学紀要―文学・美術・社会学編』第10号、2012年3月、227~242頁
  • 「英国博物館の再編と「信託管理」の確立 : 一八三〇〜七〇年代のイギリスの文化政策」『史學雜誌』第118編第2号、2009年2月、213~245頁
  • 「「幸福な家族」の肖像 : 一九世紀ロンドンの「動物史」」『史学』第77巻2号、2008年12月、329~359頁
  • ’Mechanisms and Meanings of Scientific Enterprise: The Acclimatisation Project of the Zoological Society of London, 1856-1857’ Korean Journal of British History 20(2008), pp.447-480
  • 「19世紀ロンドン動物園における科学と娯楽の関係 : 文化の大衆化とレジャーの商業化に関する一考察」『社會經濟史學』第71巻6号、2006年3月、681~703頁
  • ‘Between Ideals, Realities, and Popular Perceptions: An Analysis of the Multifaceted Nature of London Zoo, 1828-1848’ Society and Animals 14(2)(2006), pp.159-178
  • 「チャールズ・ナイトと『ペニーマガジン』 : 十九世紀前半英国の出版文化」『史学』第74巻1号、2005年9月、131-159頁
  • 「景観美、楽園、トポグラフィー-都市の中の動物園・1830年代のロンドン」『年報都市史研究』 2004年10月、107~125頁

ほか多数