Lebanon, Palestine, Syria, Trans-Jordan: Records of the U.S. Department of State, 1836-1944
西アジアの中で地中海とアラビア砂漠の間に位置する、古来シリアと呼ばれた地域は、長くオスマントルコ帝国の支配下に置かれ、様々な宗派や民族が平和裏に共存していました。しかし19世紀以降、西洋列強がこの地域に介入すると、帝国の下での共存関係に亀裂が生じるようになります。第一次大戦中、フサイン=マクマホン協定によりイギリスからアラブ民族の独立を認められ、イギリスに協力してオスマントルコに反旗を翻したハーシム家のフサインは、第一次大戦終結後の1920年、念願のシリア国王に就任します。しかし、イギリスとフランスが秘密裏に勢力圏を定めたサイクス=ピコ協定でフランスの勢力圏と定められたシリア北部はフランスの委任統治領となり、フサインは国王の座から追放されました。フランスの委任統治領では1926年に伝統的にマロン派キリスト教徒が多数を占めたレバノンがシリアから分離する形で自治権を獲得します。イギリスの委任統治領と定められたシリア南部のヨルダン川東岸ではトランスヨルダン首長国がイギリスの保護下に成立、フサインの子のアブダッラーが首長に就任します。同じくイギリスの委任統治領となったヨルダン川西岸のパレスチナでは、19世紀以降のシオニズム運動の高まりの中で、ユダヤ人の移住が進みます。
本コレクションはオスマントルコ帝国下の1830年代から第一次大戦を経て英仏の委任統治末期の1944年までの約100年にわたるレバノン、パレスチナ、シリア、トランスヨルダンの地域情勢を米国国務省の出先機関が報告した4万ページ以上の外交文書を収録するものです。イスラエルの建国以前にあって、様々な宗派や民族の平和的共存していた一方で、今日の紛争の火種が撒かれた時期において、米国は比較的中立な立場からこの地の情勢を観察できる立場にありました。4万ページ以上の米国外交文書を通して、中東紛争以前の中東の地域事情が明らかになります。
以下のサブシリーズが含まれています。
- ベイルート駐在米国領事急送文書(Despatches From U.S. Consuls in Beirut, Lebanon, 1836-1906)
- エルサレム駐在米国領事急送文書(Despatches From U.S. Consuls in Jerusalem, Palestine, 1856-1906)
- 米国国務省レバノン国内事情関係文書(Records of the Department of State Relating to Internal Affairs of Lebanon, 1930-1944)
- 米国国務省シリア国内事情関係文書(Records of the Department of State Relating to Internal Affairs of Syria, 1930-1944)
- 米国国務省トランスヨルダン国内事情関係文書(Records of the Department of State Relating to Internal Affairs of Trans-Jordan, 1930-1944)
さらに詳しく
関連分野
- 植民地主義
- 中東研究
- 20世紀研究